ソフトウェア工学の最後の演習は50人プロジェクトを動かすことで大切なことを学ぶ

昨日で今期の和歌山大学の担当講義が終了しました。最終日、経営情報システムという院生向けの講義は試験で、もう1コマ、学部生向けのソフトウェア工学演習は大きな演習課題を例年やってもらってます。
ソフトウェア工学演習は開発における様々な工程を5~6名のグループで実習していくのですが、最後は受講生全員で50名程度の大きなグループを使って活動することを学びます。条件はリーダー1名とサブリーダー10名(各グループから選抜)は一切手を動かさないこと。制限時間は講義時間終了まで。やることは教室をきれいにするために、ごみを拾う、机の落書きを消す、机をきれいにならべる、以上3点です。
サブリーダーのなかからいじわるな方法でリーダーを1名決定し、「あとはまかせた。終わったら声をかけてください。」とお願いして私はずっと後ろで様子を見てました。
完了後の姿がこの写真。とってもきれいでしょ!!
で、リーダーはとっても貴重な体験をしたのですが、以下のようなことを感想として語ってくれました。「作業を分担したり方針を決める間の時間など、多くの人が手待ちの状態を作ってしまったことが反省です。」実感で得た学びはきっと忘れないでしょう。50人集まって50人分の力を出すことはほとんど不可能に近い。30人分ぐらいの仕事をこなすために50人必要なのだと理解してくれました。手待ちを無くすための工夫などソフトウェア開発の知識以外にリーダーがおさえておくべきノウハウはたくさんあります。他にも、リーダーが出した方針よりもいいアイデアを出してくれる参謀のような人が出てきました。「リーダーはすべての面で優れていなくても構いません。自分より良いアイデアを出す人がいたら、素直に話を聞きましょう。ただし決めるのは自分。目的遂行のためにどちらがいいか判断力と実行力が問われます。」と伝えました。
そして、もう1つ本当に大切な事。掃除が終わった瞬間は各人の荷物がそれぞれ机の上に置かれている状態でした。私は「じゃあ、最後に皆さん荷物を持って一番前に集まってください」とお願いしました。そのときの皆さんの動き・振る舞いが美しいのです。机やいすに当たらないように注意して歩く。カバンが当たって動いてしまったら直す。皆が自然にそうしています。自分たちがきれいにしたのだから、それを保ちたいという気持ちがうまれます。そしてこう伝えました。「このあとこの教室はお昼休みにお弁当やパンを食べる人が集まってきます。きっと机の列を乱すでしょう。またゴミを持ち帰らずに放置する人もきっといるでしょう。皆さんはそうなってほしくないけど、きっとそうなってしまうと思っている。でも他の人はともかく、皆さんはこれからはそれをしないと思います。」
そして、もう1つ。「今ならできると思います。自分たちの部屋を掃除してくれる母親や校舎や駅などでトイレなどをきれいにしてくれている清掃会社の人たちに感謝すること。お互いが相手のやっていることに敬意をいだき、感謝しありがとうと声をかけることがこの世の中本当に大切なことなんです。これはチームで動くときにチームのメンバーに対しても同じ気持ちであってほしいと思います。」
そして最後に「今日は皆さんはだれかに尊敬されてもいい素晴らしいことをやりました。机を動かさないようにそーっと、でも胸を張って教室を出てもらったらいいと思います。」
きれいになった教室を携帯電話のカメラで写している学生さんも何人かいました。それが「自分の仕事に誇りを持つ」ことなんだろうなぁと感じた最後の演習講義でした。