職人・技能の先行きは空虚の合理化社会でつぶされているのではないか?

マンション建築の現場で型枠工、鉄筋工などの職人が不足しているという話を色々なところで聞く。住宅も大工が不足しているという話が多く聞かれる。

理由は建設需要の冷え込みにより職人・技能者が他業界に流出したことが大きい。一度流出した人材はなかなか戻らない。当り前である。職人本人も家庭を守る生活基盤が必要であるし、また建設業界に復帰したくなるほど業界に魅力は感じられないからである。

また職人の単価がいっこうにあがらない業界構造にも問題がある。3次下請け、4次下請けで人夫出しにいそしむ企業の存在や、あるいは重下請構造により中抜きだけを行う企業、そしてそうした企業の存在を悪とする職人のモチベーションはあがらない。

工種にもよるがベテランの職人でも日当1.5万円やそれ以下の単価であることはよくある話。それではやってられないと嘆く職人は自分が工事に与えることができる付加価値を明示してきたか。それも問題である。品質、工期、単価で比べた場合に、腕のいい職人はそうでない職人より品質が良い・・・しかしそれは職人側の主観的な意見であり施主・元請が望む品質が保てていれば、それ以上の品質は必要ないともいえる。

自分の価値は顧客に与えられる付加価値で決まり、その判断は自分ではなく顧客側にある。例えばファストフードで素晴らしくできのいいハンバーガーを作ることができる人と、普通のハンバーガーを作ることができる人。できの良し悪しで単価は変わらない。顧客にとっては同じハンバーガーである。ファストフード店ではなく、高級店で、その価値を認め高い対価が得られる業界で腕を振るえばいいということになる。

求職と求人のミスマッチは必ず起こる。しかしミスマッチを抑えるためにも、腕のいい職人が求められる現場と、そうした職人のマッチングが必要になってくるのである。それは業界全体で取り組まなければならない問題だろう。