『ブルー・オーシャン戦略』 建設業にもブルー・オーシャン戦略は存在するのか?

 『ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する (Harvard business school press)』は3年ほど前に翻訳発刊されたもので今日はこの本を紹介したい。「ブルーオーシャン戦略」というのはマーケティング戦略の1つで一言でいえば「一人勝ちの土俵を作る戦略」といった感じだろうか。多くの市場で企業はライバル会社との競争に打ち勝つために差別化を図っている。そうした土俵をレッドオーシャンといい、ブルーオーシャンとは対極にある。

 この本はその戦略の内容、立案の方法と計画の進め方を紹介するもので「戦略キャンバス」という道具を足がかりとして様々な方面に言及している。印象的だったのは以下の2点である。

  1. 必要なアクションとして提供するものに対して「増やす」、「付け加える」以外にも「取り除く」、「減らす」がブルーオーシャン戦略には効果的である。
  2. 自社の商品を購入してくれる顧客、購入してくれない非顧客とを比較するにあたって、「その違い」を分析するのではなく「その共通点」に着目することでより大きなブルーオーシャンを発見することができる。

 住宅においても例えば200年住宅構想にあやかって、その認定基準を満たす住宅を提供することは「付け加える」にあたる。しかし顧客が本当にそれを望んでいるのであろうか?200年住宅対応版とそれより安価な非対応版(これが「取り除く」)が両方提示された場合、顧客はどちらを選択するかをよく考えなければいけない。もちろん長期的な将来を見据えた価値や地球環境のことを考えると建前上の答えは明確なのであるが・・・
 2つ目の「共通点」に着目する点についてはどうだろうか。あなたの会社にリフォームを依頼した顧客。ライバル会社に依頼した顧客。その違いは嗜好性や居住地域、家族構成や所得などあるかもしれない。しかし違いばかりに気をとられているとターゲットを必要以上に狭めてしまい小さな市場で戦うことになる。それよりも共通する点をピックアップしその共通点のニーズに即したサービスを提供することでより大きな市場を狙うことが可能になるのである。

 この本は多くの事例を含んでいる。翻訳本であるが日本企業の事例もいくつか紹介されておりおもしろい。