『鉄を削る』

 建設業に特化した中小企業診断士として活動しているため、話題も建設業に偏ったものとなってしまうが、今回は製造業の中でも熟練旋盤工が書いた書物を紹介したい。
 今年度より開始した新しい職務により製造業のことにも少しはあかるくなっている必要があった。生産管理面からいえばQCや5S、シックスシグマなど色々と方法論はあるが、経験が覚束ないため殆どの場合は知識の提供に留まりノウハウを提供することはできない。
 しかしそんなことよりも興味があったのが町工場の職人はいったいどういったことを考えて鉄を削っているのだろうかということ。職人の気質・考え方に触れることは会社のそれ自体に触れることとなる。だから建設会社でも現場の人の意見や話を聴くようにしている。
 この書籍は旋盤工でもある小関智弘氏の著書で、著者の経験を織り交ぜながら町工場の技術や職人としての考え方・感じ方を紹介している。特に現在はNC化された旋盤技術も実は従来の旋盤技術を身につけていなければ単なるオペレータ(書の中ではチャック屋と呼ばれていた)に過ぎずものづくりの本質に触れることはできないということが折々に感じられた。キリコの形や色で材質がわかったり、そもそも無臭であるはずの金属の匂いが感じられたり・・・話題は多岐にわたり非常に面白い。時間も忘れ読みきってしまった。