宮大工棟梁・西岡常一「口伝」の重み(2009-11/100)

宮大工棟梁・西岡常一「口伝」の重み (日経ビジネス人文庫 オレンジ に 2-1)

西岡常一氏の自伝とインタビュー・座談会などの内容をまとめたもの。自伝は日本経済新聞の「私の履歴書」コーナーに掲載されたものだ。

この本を拝読して思うところは2つ。

1つ目は「工」という字である。先に紹介した小関智弘氏の著書の中になるのだが、「工」は訓読みで「たくみ」と呼ぶ。小関智弘氏はものづくり・製造業を主として工(たくみ)が集う場(ば)としての「工場」が中心である。西岡常一氏は言わずと知れた日本一の宮大工である。「大工」は大きな工(たくみ)と記す。建設業で「工」の字を見て最初に思い浮かべる言葉はもちろん「工事」である。「工(たくみ)が成す事(こと)」という意味に捉えたい。そして「工(たくみ)」という言葉には経済社会の効率や収益といった言葉は馴染まない。しかし今の経済社会により多くの「工(たくみ)」が流出し失われ日本全体の大きな損失になっていると思う。また「工事」を単なる経済活動や作業としてしか考えられず「工(たくみ)」の心を失っている人が多いように思える。「大工」になりたい子供が増えていると聞いたことがある。そうした子らが思い描く「大工」は「工(たくみ)」だろう。そうした夢を実現する場を守ることに貢献できればと思う。そのために自分は工事屋ではないが「工(たくみ)」を目指したい。

2つ目は西岡常一氏の宮大工としてより人間としての生き様に多くのことを学んだこと。
自伝の中やあるいは周りの方々の言葉から色々な発見や気づきがあった。ここはうまく表現ができないのであまり多くは書けないのだけれど…

私がよくお世話になりこのブログでも何回か登場する幹工務店の西出氏からの言葉もこの本の言葉も共通することが多い。家を建てるには木を知り土地を知り文化を知り歴史を知ることで深みが生まれる。そして大地の育みを自然な姿で組み上げることが本来あるべき家づくりのように思える。

宮大工棟梁・西岡常一「口伝」の重み(2009-11/100)」への1件のフィードバック

  1. 『 木に学べ?法隆寺・薬師寺の美 』西岡 常一 (著)

    法隆寺金堂の大修理、法輪寺三重塔、薬師寺金堂や西塔などの復元を果たした最後の宮大工棟梁・西岡常一氏が語り下ろしたベストセラー、待望の文庫版。宮大工の祖父に師事し、木の心を知り、木と共に生き、宮大工としての技術と心構え、堂塔にまつわるエピソード、そして再建

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