公共工事事業者として存続するための考察

公共工事の予算削減がより一層加速する。

新政権になり一月余り。前原国土交通大臣の様々な発言を待たなくても建設業界では「公共工事の予算削減」は皆が認識していることである。それがより具体性を増したまでだ。

ただ新政権もやみくもに削減するのではなく必要なインフラ整備は行うとしておりそれに伴う工事も発生する。ただ過去の「地域配分」的な機能を公共工事に持たせることは今後も減少するはずである。すでに数年前の研究や試算から建設・インフラに投資するよりも福祉・サービスに投資したほうが「地域配分」という意味での投資効果が高いという意見もある。

それでは公共工事を中心に事業を行ってきた建設会社はどうすればいいだろうか。「公共から民間へ」、「建設業から異業種へ」などは随分前から叫ばれていることである。公共工事事業者として存続するためには・・・

それはやはり「顧客の視点を持つ」ことが第一である。

公共工事の顧客・・・それは発注者ではなくそれを利用する地域の住民である。

「隣町にある大きな病院へのアクセスが不便なためそこに至る道路を新設する」

このケースの場合の顧客のニーズは何だろうか?

「病院にスムーズに行ける」では落第点。道路工事ありきで考える建設会社が陥りがちな間違った解答。

答えは「充実した医療サービスを身近に受けられる」である。そのためには大きな病院がいい。でも隣町にしかない。じゃあアクセスしやすいように道路整備をしようというのが1つの選択肢。

「自分の町に同様の病院を作る」というのも顧客ニーズを満たす選択肢の1つである。もちろん、こちらの選択肢にも検討すべき課題は沢山あるためどちらを選択するかを決定することは容易ではない。

しかし新政権で財源や資金の使途が限定されないことが多くなるとこうした検討・選択を発注者側で検討する機会が多くなる。どちらの方が投資効率が高いか、利便性が高いか、住民が喜ぶか・・・限られた人員しかいない小さな自治体ではすべてに配慮することは難しいだろう。

そこで登場するのが地域の工事事業者である。

地域住民のニーズを知り、行政の動きを把握し、提案する。

提案といっても入札案件が決まっているなかで行うVE提案や総合評価方式のことを言っているのではない。もっと川上段階での提案である。

何故この道路を作るのか? その目的は? 住民の意見は? 他の方法は?

そうした「意識を持ち、情報収集し、技術を磨き、提案する」という姿勢が今後求められる一番基本的な事柄だと考える。