「おばあちゃん、手すりはこの辺でええか?」

 「おばあちゃん、手すりはこの辺でええか?」
 ある工務店がトイレに手すりをつけるための打ち合わせをしている風景だ。本人の状態にもよるが、トイレにつける手すりの位置は縦手すり、横手すりとも基準値があり、手すりの直径も28mm~32mmが良いとされている。これらは福祉住環境コーディネーターの試験について学べば習得できる知識である。しかし所詮知識である。
 「おばあちゃん、手すりはこの辺でええか?」
 この一言には勝てない。さらに
 「だいたい縦手すりはこのあたりが使いやすいとされてるんや」
 と付け加えると利用者は安心する。この二言目が資格の活きるところである。数値化・標準化されたことを覚えることは可能だが、臨機応変に対応するにはやはりユーザの立場に立つのが一番の早道である。