まちづくりの新潮流―コンパクトシティ/ニューアーバニズム/アーバンビレッジ

 最近調査研究している「まちづくり」、1冊の本を紹介したい。
 『まちづくりの新潮流―コンパクトシティ/ニューアーバニズム/アーバンビレッジ
 「まちづくり」の素人に近い私が調査を進めているとすぐに出会った言葉がある。「コンパクトシティ」である。この言葉から昔々の小さな農村風景を思い浮かべた。中心市街地から離れた位置に田園都市ができ、また別の離れた位置に大型ショッピングモールができ、何をするにも車が必要な社会。それは人口密度が高く、ウサギ小屋と呼ばれた日本の住環境からすれば外側にゆとりを求めたある一時代の結果として受け止めなければならない。「まち」も生き物であり、その住民が中心となって試行錯誤を行い住み良い「まち」が形成されていく。今その新潮流の1つにあたるのが「コンパクトシティ」なのである。
 本書は著者が実際に足を運んだ世界各国の先進的な事例を多く紹介しながら、その新潮流の枠組みが捉えられるようになっている。成功事例、失敗事例を見ながら、さらには掲載されている写真や地図を見ながら「なぜうまくいったのか?」「なぜ失敗したのか?」を考えさせられてしまう。
 建築家が書いた本にしては、建築に関して全くの素人であっても読み易い内容になっている。おそらく専門家が読む場合と得る情報量は格段に差があるのであろうが、まちづくりのことを考える1人間として、この書物はお勧めしたい。
 著者は建築家で鹿児島大学教授の松永安光氏。
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