建設会社の決算書分析で留意すべきこと

Image001 ある企業の経営支援を行うために決算書の分析を行った。

左のグラフは各数字をプロットしたもの。預かった決算書は建設業会計に対応しておらず材料費以外の労務費、外注費、間接経費はすべて販管費に含まれているタイプであった。

建設会社であっても建設業会計に基づいた決算書を作成していないケースは多い。担当する税理士が建設業会計に詳しくない場合など理由は様々である。

このグラフでまず最初に着目すべきは粗利のところである。決算書の売上総利益を単純に粗利として捉えると、売上(緑)と粗利(赤)は明確な相関があり、売上拡大にともなって粗利も増加していると考えられる。

しかし、建設業は重下請構造である。原価の大部分を外注費が占めるのに、その外注費が販管費に組み込まれていると当然正しい分析はできなくなる。そこで販管費内の「外注工賃」に着目するとグラフ(黄色)でもどんどん外注費が増えていることがわかる。これを差し引いた粗利(外注費込)(ピンク色)を見ると見事に減少傾向にあることがわかる。

売上重視でドンブリ勘定の建設会社に多く見られるパターンである。売上が伸びているのに利益が確保できず借入依存体質となっている。「忙しいのに経営が良くならない」と経営者は嘆いているのだ。経営改善の策として販管費のコストダウンを試みる。この企業においても外注費を除いた販管費(水色)の値は減少している。しかし経営は良くならない。何故なら原因は販管費ではなく工事原価にあるからだ。

工事原価を見直すのに画一的な方法論は存在しない。工事別に予算と実際原価を比較してコストダウンの可能性を検討することになる。その前提として、工事別に原価が把握できることが必要。だから建設業会計を導入する必要があるのである。

※決算書では一般会計にして、管理会計(内部資料)で建設業会計を導入している場合は問題ない。

「うちももしかして・・・」と一度分析してみることを提案する。