伝統の淡路瓦

 今日から淡路島にて2泊3日の研修。初日の今日はあいにくの天気であったが、いぶし瓦の製造を行う企業様を訪問させて頂き、工場内を見学したり会長、社長の話を伺うことができた。 いぶし瓦は粘土瓦の一種で表面をいぶすことにより表面の炭素配列を整え銀色の光沢を出している。季節や天気などで表情を変え非常に趣き部会。淡路島が日本最大の産地(44.9%、2位は愛知県)で訪問した津井地区には他にも多くの製造窯が存在する。粘土瓦には他にも釉薬(ユウヤク)瓦(又は陶器瓦)や塩焼瓦がある。形状によっては平板瓦と呼ばれるものもある。
 製造方法は土と水をクラッシャーと呼ばれる装置で混ぜ合わせ土練機によって練られ成型される。カット、プレス後に乾燥し刷け土を行い最後に半日以上の時間をかけて焼成する。成型の形によって様々な瓦を作ることができる。淡路瓦の紹介パンフレットに掲載されているものだけでも1,000種以上あった。
 淡路瓦は鬼瓦や家紋を入れた瓦など芸術性あふれる造形もあり、単なる屋根材としてではなくインテリア、エクステリアなどで様々な応用が考えられるものである。また、当日宿泊したホテルではタイルとしても用いられており文字通り「いぶし銀」の渋い光沢を放っていた。
 しかし流通面ではプレハブ住宅やマンションが多い現在、粘土瓦全体の出荷量も減少しており平成16年度で8.8億枚、この10年で45%減という厳しい統計資料を頂いた。本格木造住宅を好む施主がいたとしても都市部では広い建設用地を確保することが難しいためコンパクトな構成になりがちであり、小さな家の屋根には少し重厚すぎる印象もあることから今後も「瓦」として流通量を増やすことは難しいと考える。
 もう一つ淡路瓦を屋根瓦として検討する際に気になるのがコストである。スレート瓦、セメント瓦の方が瓦1枚あたりの単価はもちろん安い。葺き替え時のコストは100?換算で130万円(石綿スレート55万円、セメント70万円※)である。しかし住宅に要する費用は最初の建築費用だけでなくメンテナンス費用も要する。淡路瓦は20年、30年とメンテナンスが不要であるが石綿スレートやセメントは10年に一度ぐらいはメンテナンスが必要となってくる。20年でのトータルコストは同換算で淡路瓦は同額の130万円で石綿スレートは175万円、セメント瓦は190万円との試算であった。
 流通量の減少を極力抑えるためにも淡路瓦の優れている耐久性、耐火性などを広く周知させることが大切であると考える。そのため、生産者は建築設計事務所や建材店などに積極的に瓦の良さをアピールしていく必要がある。

※いずれも数値は兵庫県粘土瓦共同連合組合連合会作成の『Roof Plannning Book』を参考にした。

伝統の淡路瓦」への4件のフィードバック

  1. さすが、製造現場的な視点からの記事ですね。
    同じところで同じものを見ても、こんなに視点が違うのかと、学びになりました。
    またぜひ、情報交換しましょうね。

  2. どもども、安田さん。
    さすが建設プロコン診断士ですね。
    視点が鋭いです。
    TBしたのでよろしく。

  3. まこさん
     コメントありがとうございます。建材の製造現場を見るとどうしても建材店や工務店の視点になってしまいます(^^;
     今後ともよろしくお願いします。
    遠田さん
     コメントありがとうございます。こちらからもTB送りました。
     今後ともよろしくお願いします。

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