これはあるホテルに私が問い合わせたメールです。
「一歳の子どもがいるのですが夕食は部屋食か個室での食事が可能でしょうか?」
そしてこれがその回答です。
安田様
お世話になります。
お食事場所のお問合せの件ですが、当館はお部屋でのお食事の御対応を致しておりません。
お食事処に数室、個室はございます。
こちらをご希望の場合、室料と致しまして、¥5,250(ご夕食時)頂戴いたしております。
こちらをご希望の場合は、ご予約の際に、個室も合わせてご予約下さいませ。
尚、姉妹館の○○○は、御夕食をお部屋のほうでお召し上がりいただけるプランがございますので、ご検討下さいませ。
宜しくお願い致します。
質問に対する答えもありますし、部屋食に対する提案もあります。何も問題ないように思います。
しかし顧客とのメールでのやりとりの難しさを痛感する良い事例でもあります。
このメールの問題点はこの2つ
- 「お世話になります」という業務的な切り出しで始まっている
- 問合せ内容について「断り」から入っている
さらに付け加えると
- 問合せを問合せとしか捉えておらず「顧客からの要望である」という視点が抜けている。そのため「申し訳ございませんが・・・」という言葉が無い
- 顧客を喜ばせるというサービス精神が全く感じられない
といえます。「顧客を喜ばせる」というのはルールを無視して部屋食を実現しろと言っているのではありません。顧客の立場に立つとすぐに以下のような情景が思い浮かびます。
ある家族が一歳の子どもと旅行を計画しており親がどこに泊まるか相談・検討している。旅行は計画を組むことも楽しみの1つでありパンフレットやガイドブック・インターネットを使いながら楽しい時間を過ごしている。
サービス業として「顧客の視点」を大事にするのであれば上記の情景を思い浮かべ配慮・受け止め・触れることがとても大切です。例えば・・・
「小さなお子様とのご旅行さぞかし楽しいことかと存じます。こちら方面へのお越しは初めてでございましょうか。・・・(続く)・・・。さてお問い合わせの件ですが、誠に申し訳ございませんが・・・(続く)・・・。最後となりましたが安田様のこのご旅行が楽しいものとなりますよう心よりお祈り申上げます。」
といった具合です。受け止めることにより顧客に配慮した心配りのある回答となります。
話は突如建設業のこととなりますが、住宅の間取りなどを検討している家族と工務店のやりとりでも同じことがいえます。
「娘が自分の部屋にインターネットで見つけた外国製の出窓を取り付けて欲しいと言っているのですが可能でしょうか?」という問合せに対して、
「安田様。いつもお世話になっております。当社でご検討いただいている住宅は規格外の窓を取り付けることはできません。オプションとして指定の出窓を取り付けることはできますが、追加料金として105,000円必要となります。ご検討下さい。」という回答。
回答に必要な要件は伝えています。ただ、部屋の内装を家族みんなで楽しく検討しているという情景が全く浮かんでいません。少なくとも最初に「内装のご検討進んでいるようですね。」や「部屋の内装を考えるときは時間を忘れるほど楽しいですよね。」といった受け止めの言葉を入れることでその後の文章の印象が大きく違ってきます。
顧客側もインターネット・メールを使えるようになり打ち合わせもメールで進める場合が多くなってきました。これはホームページでも言えることですが、そういった目の見えないやりとりにこそ接客技術と相手を思いやる配慮が必要です。
今回の件で色々と学ぶことができました。ご回答いただいたホテルの担当者の方に感謝いたします。