建設投資予測の増減で一喜一憂する企業に未来はありません

建設経済研究所が7月27日に建設投資予測の最新情報を公開しました。日本経済新聞にも記事として取り上げられていたのでご存知の方も多いと思います。

今年度の見通しが39兆円。来年度の見通しが40兆円。微増です。

一昔前は建設投資が50兆円。業者数が50万社。従事者が500万人とざっくり5が並ぶ数字だったのですが、それは本当に昔の話になりました。

私も建設業セミナーの冒頭で必ずこの建設投資の話をします。そして業者数が減少しない現在、建設投資を業者数で割り算すれば取り分は減るばかりでダンピングは今後より一層ひどくなります・・・と付け加えます。

それは限られたパイを経営革新できない閉鎖的な企業が取り合うからです。建設産業は他の産業と様々な部分を共有しています。今後成長が見込まれる3K産業(環境・観光・健康)にかかわる建設分野もあります。また建設業が建設業務しかやらないと決め付ける必要もありません。地域密着型の事業を長年行ってきた建設会社には観光や健康といったまちづくりに直結する産業とのかかわりにおいて優位性を発揮できる部分が多いのです。

それに気がつかず、また冒険しようとせず、建設投資予測で一喜一憂し、景気の波に身を任せる企業・・・ 波にまかせた身はいずれ沈むしかないことに早く気がついてほしいものです。

成熟社会における建設産業の成長戦略 競争の時代を勝ち抜く、企業の選択と集中を考える

昨日は大阪商工会議所にて「成熟社会における建設産業の成長戦略 競争の時代を勝ち抜く、企業の選択と集中を考える」というテーマのセミナーを拝聴して参りました。

私の事務所は貝塚市になりますが、ご縁があって大阪商工会議所に入会しております。また他にも泉佐野商工会議所、岸和田商工会議所、和歌山商工会議所にも入会していますが、地元貝塚商工会議所は昨年度で退会させていただいたという変な状態になっています。

と余談はおいておきまして、今回のセミナーは大阪商工会議所の建設・建材部会の第5回例会として開催されました。私は部会には所属していませんが、参加可能ということでしたので申し込んで参加してきました。

Imag0304 五十嵐氏は早稲田大学の客員教授で過去には不動建設にも勤められたこともある建設業のプロフェッショナルです。

講演では建設業のこれまでと今後をあらためて確認した上で今後の成長戦略について説明がありました。

日本はストック社会を迎え、今後は欧米型建設業モデルが参考になります。

また環境、観光、健康のいわゆる3K産業が有望であり、そうした成長産業に付随する形で施工・サービスを提供することが望まれます。

維持修繕分野では住宅リフォームやマンション改修だけでなく道路、水道、橋梁といった土木系インフラも更新時期にあることから土木系リニューアルも今後有望視されている。ただし自治体には予算が限られているので低コストはもちろんのこと付加価値の高い施工・サービスの提供が必要です。

といった内容は私もセミナーなどではよくお話させていただくことです。同調できたという安心感を感じつつ・・・

あと興味深かったのは建設(特に建築)投資は今後大きな増減は無いのではないかという分析です。40兆円を切る勢いで減少し続ける建設投資ですが、今後新築が減りリフォーム・維持修繕が増える傾向であるのことは共通認識です。ただリニューアルまでいくと新築とそう変わらないコストがかかります。しかしビルやマンションなどは取り壊して新築してしまうと不動産価値がいったん途切れてしまいます。テナントも休業しますし、再開したとしても帰ってくるとは限らない。そこに大きなリスクがあるということです。

ただリニューアルといっても耐用年数を延ばすだけでは物足りません。経済価値や環境価値を高めるリニューアルが望まれます。そうした意味では求める価値とお金の使い方が変わるだけで規模はあまり変化したいのではという推測もうなづけます。

国土交通省の環境不動産ポータルサイト

国土交通省が「環境不動産ポータルサイト」をオープンさせました。

環境不動産について、このポータルサイトの開設目的にもなっている以下のような説明があります。

環境価値を重視した不動産市場形成に向けて

  • 地球温暖化など地球環境問題への対策に国際的な関心が高まる中で、持続可能な社会の構築は、国際社会の最優先課題の一つとなっています。一方、不動産分野(業務部門や住宅部門)におけるCO2排出量は、日本全体のCO2排出量の三分の一を占め、いまだ増加基調にあるのが現状です。そのほかにも、生物多様性の喪失、廃棄物問題など関連する環境問題は様々です。
  • 不動産分野として果たすべき役割の大きさに鑑みれば、持続可能な環境価値の高い不動産(環境不動産)のストックを形成していくことが重要です。このような中、環境をテーマとして不動産の価値向上を図る取組や調査研究が注目されています。我が国においても、高い環境技術を活かして省エネ・省CO2などの環境価値を高めた不動産(環境不動産)の事例が増加し、これら価値を評価するCASBEEなどの指標の普及も進んできています。
  • 不動産の環境価値が投資家、ディベロッパー、ユーザーなど様々な市場参加者に認識・評価される情報整理・提供に向けて、本サイトでは、環境不動産に関する総合的な情報を提供してまいります。

環境不動産とは環境価値の高い不動産です。これらを今後ストックしていくことで環境を守ろうということです。

不動産は確かにライフサイクルが長いため環境価値を高めればその累積的な効果も高いといえるでしょう。しかし不動産は人や企業が何らかの目的を達成する手段として構築するものであり、すべての目的生産物の一部でしかありません。そのため不動産という「部分」に着目して最適化してもそれが最善といえるかどうかは疑問です。そのためにもこのポータルサイトが市場参加者としている投資家、デベロッパー、テナントなどが同じようなトータル情報を得て市場全体で最適化が図れるように動いていくことはとても重要だと考えています。

期待される効果としては環境価値の向上、環境不動産のストックが挙げられていますが、市場参加者全体が取り組むことによって不動産を通じた環境意識の高まり、共通認識、目的意識の醸成もあわせて期待できるのではないかと考えています。

環境不動産ポータルサイトはまだできたばかりで、とりあえずメニューを構成しそれぞれの箱に情報を入れてみただけという感じがします。今後、市場参加者、サイト閲覧者が掲載されている情報をもとに相互に意見交換ができるような場が提供されることを望みます。