建設会社の収支・資金繰管理の重要性について語ってきました

120323_8_02_29 3月22日に『今さら聴けない工事にまつわるお金の話』というテーマで講演してきました。

主催者は大阪府内のとある建設会社。受講者はその会社の協力会の皆様です。協力会社の競争力強化は元請の力となります。協力会社と一丸となって優位性を高め、社会に寄与する建設会社として経営していくことに微力ながらお手伝いできることはとても幸せだと感じています。

内容は収支管理と資金繰管理。といっても受講者の中には決算書の見方がわからない方もおられます。そこで経営者として決算書のどこを見て、どのように分析するかを簡単に伝えました。そして決算書には載っていないキャッシュの動きを簡単な計算で本業、投資、金融の項目で把握する方法を伝授。

そのあとは本題の収支管理と資金繰管理です。

収支は工事ごとの個別管理ですから、まずは実行予算を作成することが基本です。実行予算で予定粗利が把握できれば、経営者はその予算が守られることが前提で経営管理を行います。「予算が守られることが前提」といいましたが、予算を守ることは現場担当者の仕事であり、そこに経営者との役割分担があるからです。経営管理は主に予算書を積み上げた予定完工高と予定粗利をもとに営業活動をどうしていくか、そして次のテーマとなる資金繰管理に注力すべきです。こうした舵取りを工事着工前にすることで様々な選択肢が与えられます。そのために予算は必要なのです。

資金繰管理は工事の予算書に入金のタイミングと出金のタイミングを追加して把握することから始まります。

『新たな工事を受注することで資金が足りなくなり、融資を受ける。』

このことは一見問題ないように思えますが、粗利率が減少していくなかで、不採算工事でなくてもかかる費用は抑えたいものです。融資で資金繰はクリアできても、そこでかかる利息が工事の収支を圧迫します。しかし利息は工事予算には載ってこないため本当は利息のせいで赤字化していても気がつかないのです。

そこで、まずは融資を受けなくてすむように方策を講じる必要があります。その可能性を検討するために受講者に簡単な資金繰管理表を作成するワーキングを行いました。

120324_9_31_28 左図でC工事受注により7月の資金繰が悪くなりそうです。今(3月)の時点でこのことが把握できていれば対策を打つことができます。例えば・・・

B工事の入金(8月)を早める手段を考えます。A.竣工、引渡し、検査、請求までの段取りを早くする。B.入金を出来高払いにしてもらう。などです。得意先に対して入金タイミングを早めてもらう依頼をする際にはWinWinにするため相手に何らかのメリットを与える必要があります。例えば工事代金の減額もそうでしょう。早めることで得られたメリットを相手にも供与するわけです。

もしくは7月のC工事の代金の支払を遅くできないかを検討します。この例では支出は6月に振り出した手形の決済です。手形サイトの見直しや分割なども考えられるでしょう。その際には仕入先に対してもメリットを供与することを忘れてはいけません。

資金繰管理とはこうした管理表を作成することが目的ではなく、そこで把握できた問題を解決するために行動することにあります。3月の時点で7月の問題が把握できれば打てる手はいくつもあります。そうした先手を打つことが経営力の強化につながるのです。

講演は短い時間でしたが、そうした管理の重要性を少しでも感じていただければと思っています。

経営事項審査の改正が来年度ありそうです

Phm01_0182 国土交通省が12年度、経営事項審査の審査基準を2つ改正することを決定しました。

1つは保険未加入企業への減点措置の拡大で、もう1つは海外子会社の経営実績評価の追加です。

保険未加入企業への減点についてはこれまでも雇用保険未加入で30点減点。健康保険・厚生年金保険の未加入についても30点の減点でした。これが、「雇用保険」「健康保険」「厚生年金保険」の三つについて保険に加入していない場合はそれぞれ40点ずつ減点するとのこと。経営事項審査の受審企業のうち11・9%が保険未加入企業で減点措置拡大によって、W点が0点になる未加入企業の割合は現行の38%から74%にまで増えるとのこと。

国交省が打ち出している保険未加入業者の排除に沿う改正です。

海外子会社の経営実績評価については海外子会社の完成工事高(X1点)と、利益額と自己資本額(X2点)を加えられるようになります。

国交省は建設業の海外進出を支援しており、経営事項審査についても進出メリットを与えようという考えです。

制度上の大きな変化ではありませんが、評点への影響は大きそうです。

第3回ヤスコン倶楽部自主勉強会のお知らせ

120215_18_07_58 日時 3月14日(水) 18時~21時

場所:岸和田市浪切ホール4F 会議室
〒596-0014 大阪府岸和田市港緑町1-1 072-439-4173

・途中退室自由です!!

・参加無料です!!

120215_19_39_39_2 ・建設業経理士の過去問を用意しています。自由にご利用下さい!!

120215_19_39_52 ・建設関連3雑誌、「日経コンストラクション」、「日経アーキテクチュア」、「日経ホームビルダー」は自由にご覧いただけます。また先着となりますが、お持ち帰り頂いても結構です。

是非皆さん、ご覧下さい。

幸せは本物を選ぶことから始まるのかもしれない

120227_19_47_55 大阪府中小企業家同友会かんくう支部の建設部会の催しで珪藻土ぬりかべ体験をしてきました。企画運営を手伝ってくださったのは「フラワー工務店」の山咲さんです。

珪藻土の効果は調湿、防臭、耐火といったところだそうですが、左官職人ではなく自分で塗ってみることで家族との絆が深まり家への愛着が沸くことも大きな効果の1つと言えそうです。

珪藻土は様々な品質のものが提供されています。安価なものは混ざりものが多く、化学物質も含まれ、ライターを近づけると嫌なニオイがします。「珪藻土」の名前だけで安価なものを選ぶと、本来の目的であったハウスシック予防に必ずしも合わない場合があるということです。

品質が悪いといっても、提供する側の住宅関連企業、建材関連企業などを責めるだけではダメです。求める人がいるからそうした製品が世に出てくるのです。悪いものは買わない。そのためにも消費者、利用者もやはり勉強が必要です。「職人・専門家まかせではダメ」というと悲しくなりますが選択肢が広がるなかでは仕方がないのかもしれません。

安価なものほど混ざり物が多いという話を聴いて思い出したのは「パン」です。私の事務所の近く岸和田市には大好きなパンがあります。「タマヤ」さんです。大手パンメーカーの食パンと成分表示を見比べるとビックリします。大手ショッピングセンターの激安ブランドのものを見るとさらにビックリします。

珪藻土もパンも同じ。我々は幸せの対価でお金を支払います。安いことに理由があれば、その理由によって幸せが阻害されないかどうか、自分で判断する必要があります。

本物を提供する・・・そうした企業が生き残る世の中になるようがんばっていきます!!

建設業経営セミナー『不況に強い経営術』にて提案営業の原理原則を伝えてきました!!

120226_18_17_53 2月23日は愛知県内の管工事会社があつまる協同組合向けに『不況に強い経営術 ~提案型営業手法について~』というタイトルで研修講師を務めました。

講演時間は1時間30分。内容は1.建設業界・管工事業界の動向把握、2.提案営業について、3.元気な管工事会社の取組事例紹介の構成です。

開始時間が18時で皆さん現場作業のあと。動向把握でグラフや数字を並べても眠気を誘うだけ。資料で持ち帰ってもらい、簡単に触れるだけに留めて本題の提案営業と事例紹介に時間を多くとりました。

提案営業の手法といっても原理原則は徹底して「顧客の視点」にたつこと。それは提案内容はもちろん、提案手法、タイミング、時間などについても同じです。

例えば、最初に見ず知らずの工事会社から「提案がある!」といわれても、聴く姿勢ができていないため、相手は迷惑に思うだけで提案内容は耳に入りません。

それではどうするか。「30秒だけ時間下さい!!」と切り出し、30秒のプレゼンを誠心誠意行います。口にできる言葉は多くても200文字程度です。原稿を作って暗記するぐらいの努力は必要です。あわせて資料を提示しますが、A4一枚にすっきりとまとめます。これは説明する際に使う資料ではありません。30秒プレゼンの相手はキーマンとは限りません。たまたまプレゼンを聴くことになった人が「おもしろそう」と思っていただいたときにキーマンに伝えるために使ってもらう資料です。だからA4一枚ぐらいの情報量でちょうどいいのです。

このプレゼンの目的は、本当のプレゼンのために時間をつくってもらうことにあります。

もちろんプレゼンの内容についても顧客の「目的」と「手段」を取り違えないようにすることなどポイントをいくつか伝えました。

短い研修時間なので表面的な内容だけになってしまいましたが、営業力強化の一助になると願っています。

第2回ヤスコン倶楽部自主勉強会のお知らせ

120215_18_07_58日時 2月28日(火) 18時~21時

場所:岸和田市浪切ホール4F 会議室
〒596-0014 大阪府岸和田市港緑町1-1 072-439-4173

・途中退室自由です!!

・参加無料です!!

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・建設業経理士の過去問を用意しています。自由にご利用下さい!!

120215_19_39_52・建設関連3雑誌、「日経コンストラクション」、「日経アーキテクチュア」、「日経ホームビルダー」は自由にご覧いただけます。また先着となりますが、お持ち帰り頂いても結構です。

是非皆さん、ご覧下さい。

建設業振興ニュース No.1 2012/02/06 配信号

今月より月に一度、建設関連企業の皆様にFAXニュースを配信することにいたしました。

Photo 目的はもちろん建設業界の振興。なので、FAXニュースのタイトルも「建設業振興ニュース」です。

「うちにも送ってくれ!!」という方はメールにて、会社名、担当者名、FAX番号をお知らせ下さい。(メール宛先: yasucon@ea.main.jp)

ちなみにメールでの配信は今はあえて行っていません。予めご了承下さい。

以下、ニュースの内容です。

  1. ご挨拶
    このFAXは安田コンサルティングとご縁のあった大阪府内の建設系企業の方々に月に一度、発信させて頂いております。皆様のためになる情報発信を心掛けておりますので、何卒宜しくお願い申し上げます。
  2. 安田コンサルティングのご紹介
    貝塚市に2007年開業しましたコンサルティング事務所です。主に以下の4つの事業を展開しています。?経営コンサルティング?インターネット活用及びシステム開発支援?セミナー研修企画・講師?各種許認可・経営事項審査申請等
  3. 補助金情報「建築物節電改修支援事業費補助金」
    既築の民生用建築物において、一定の節電効果を有する設備を導入する場合、その経費の一部が助成されます。応募期間 平成24年1月30日~2月29日(工事終了は7月末まで)。補助率 補助対象経費の1/3以内(但し、中小企業者は補助対象経費の1/2以内)上限5,000万円 下限100円
  4. 施策情報 建設業への金融支援が延長・拡充されます
    (1)下請保証制度(下請債権保全支援事業)の延長・拡充
    下請建設企業が元請建設企業に対して有する債権の支払を保証する下請債権保全支援事業について、?事業期間の1年間の延長を行う(平成25年3月31日まで)とともに、?被災地域における建設機械の割賦販売・リース・レンタルに係る債権を保証対象に追加します。
    <本事業の概要> http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk2_000033.html
    (2)元請融資制度(地域建設業経営強化融資制度)の延長
    公共工事又は公共性のある民間工事を受注する元請建設企業が低利で融資を受けられる地域建設業経営強化融資制度について、事業期間の1年間の延長を行います(平成25年3月31日まで)。
    <本制度の概要> http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk2_000011.html
  5. 「ヤスコン倶楽部自習室」のご案内
    経営事項審査で加点対象となる建設業経理士試験の資格取得を応援しています。以下の日程で自習室を開きますので皆さんご自分の自己啓発のために是非ご参加下さい。もちろん無料です。当日は建設業経理士の過去問を用意していますので是非ご活用下さい。※自習室ですので講義・解説はありません。※建設業経理士以外の試験勉強でも是非ご活用下さい。※事前登録は不要です。当日直接お越し下さい。
    日時:2月15日(水)、28日(火)、3月14日(水)いずれも18時~21時 途中入退室自由
    場所:岸和田市浪切ホール4F 会議室
  6. ★ ★ 広 告 ★ ★
    『ヤスコン倶楽部』は安田コンサルティングが提供する各種サービスを年会費6万円にてすべて半額でご利用いただける会員サービスです。詳しくはお問合せ下さい。
    例1 経営事項審査申請         ¥84,000 ⇒  ¥42,000
    例2 ホームページ作成         ¥70,000 ⇒  ¥35,000
    例3 経営革新支援制度認定支援    ¥300,000 ⇒ ¥150,000

建設業への金融支援が延長・拡充されます

中小企業金融円滑化法がこのままでは12年3月で期限切れ(※結局円滑化法は再延長が決まりました。)となるため、様々なところで不良債権が表面化し企業の倒産が増加するといわれています。

そんななか国交相の方から10日にプレス発表がありました。建設業むけの金融支援が延長・拡充されます。

以下その内容です。

1.経緯と趣旨

  • 被災地における建設機械の調達の円滑化を図ることにより被災地の復旧・復興に寄与するとともに、地域社会の維持に不可欠な役割を担っている建設企業の経営及び雇用の安定、連鎖倒産の防止等を図るため、建設業への金融支援事業の延長・拡充を行います。

2.拡充の内容
(1)下請保証制度(下請債権保全支援事業)の延長・拡充

  • 下請建設企業が元請建設企業に対して有する債権の支払を保証する下請債権保全支援事業について、?事業期間の1年間の延長を行う(平成25年3月31日まで)とともに、?被災地域における建設機械の割賦販売・リース・レンタルに係る債権を保証対象に追加します。
    <本事業の概要>
    http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk2_000033.html

(2)元請融資制度(地域建設業経営強化融資制度)の延長(プレスリリース原文では「延長」ではなく「拡充」となっています)

  • 公共工事又は公共性のある民間工事を受注する元請建設企業が低利で融資を受けられる地域建設業経営強化融資制度について、事業期間の1年間の延長を行います(平成25年3月31日まで)
    <本制度の概要>
    http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk2_000011.html

この手の支援策は企業側の出血を止めなければ単なる延命であって倒産の先送りになるだけだといわれます。ある意味正論ですが、日本を取り巻く環境を考えれば、復旧・復興に携わる担い手が、その活動に専念できない環境にあってはその損失は多岐に渡ります。被災地域における重機のリース関連まで制度が拡充されたこともその損失を避ける策の1つと言えるでしょう。復旧・復興特需の間に経営基盤を安定させる支援の実施も行われていくべきでしょう。そうした支援策が講じられることも願っています。

新たな事業展開を支援するPFI・CMの現状と可能性!~建設産業経営戦略セミナー~

近畿地方整備局と財団法人建設業振興基金の主催で『新たな事業展開を支援するPFI・CMの現状と可能性!~建設産業経営戦略セミナー~』が開催されます。

● 日時: 平成24年1月26日(木) 13:30~17:00
● 場所: ドーンセンター7階ホール(大阪市中央区大手前1-3-49)
● 対象: 建設企業・地方公共団体等職員
● 定員: 500名(先着順)
● 参加費: 無料

実は行きたかったのですが、午前中和歌山大学で講義をしている曜日なので断念です。行きたかった理由は建設会社の生き残りのためのキーワードとしてCMが重要な位置を占めるからです。CMは新しい概念ではありませんが、アメリカなどでは当たり前になっている建設現場管理の手法です。日本でゼネコンを中心に行われている一括請負とは大きく異なります。

一括請負は重下請構造や多くの工種が混在する建設現場において、発注者側からみた発注業務が単純化されるメリットがありますが、ブラックボックスとなって原価構造や体性、あるいは責任分界点などが不明確になるデメリットがあります。材工一括発注も行われるため原価構造はさらにわかりにくいものとなります。

一方CM方式は設計事務所や建設会社が現場管理のみを請け負い、各専門工事業者との契約は発注者がそれぞれ行い進めていく方式です。もちろんCMを行う企業はそうした工事業者と発注者との間をとりもつ専門家としての役割も担います。

CM方式は建設会社にとって価格競争力や現場管理能力が身につくだけでなく、新市場への展開も一括請負と比べてやりやすくなります。もちろん海外展開も視野に入れることが可能になってきます。

企業によってはCM方式の採用により、一括請負の企業との差別化を図り、顧客に対して優位性をPRしているところもあります。

今後どんどんCM方式が広まっていってほしいものです。

建設業界の人手不足の影響が深刻に

Photo 建設業界の人手不足が深刻になっています。

左のグラフは建設技能労働者の過不足率の調査(国交省)結果から作成してみたグラフです。

3月までは過剰であったものが7月から不足に転じ、8月は2.1%の不足となっています。

震災の影響で建物の補修需要が急増したからと昨日(9月28日)の日経新聞夕刊のトップ記事にありました。

その他の建設業界の雑誌でも同様の問題が取りざたされています。日経ホームビルダーの記事では高知県の工務店で下請だった基礎工事業者が工事依頼があったにもかかわらず連絡もなしで東北に向かってしまったとの話です。

特に職人・渡り鳥・一匹狼の色が濃い工種はこうしたことが起こりやすいでしょう。被災地の職人需要を鑑みて仕事がある地域に移動したくなる意識もわかります。

ただ、今後5年、10年、その先を見据えての行動が必要です。企業活動は「永続」を意識した活動が大切。これまで基盤を厚くしていた地元を捨てて行動するのは良くない。永続・利益確保のために一時的な拠点移動はやむを得ないとしても。そのため、これまでの地元業者(発注元や元請、協力業者)の理解を得ておくことが大切でしょう。