建設業の社会保険未加入者問題、保険料について

 建設業 保険料国交省が保険未加入業者の排除に向けて様々な取り組みを行っています。情報発信やまもなく開始される建設業許可更新時の指導などもそうです。
「建設業しんこう」の8月号に社会保険にかかる負担割合についての記述がありました。
健康保険、厚生年金、労災、雇用保険などを加えると全部で全体の16.3175%。介護保険を除くと15.5425%ということになります。
この数値から概ねの負担増を計算することができます。月額の給与合計が100万円であれば16万3,175円ということになります。年額で計算すれば195万8,100円ということです。
この負担増は大きく企業の利益を大きく圧迫することになりますが、一つは法人は加入が義務付けられていること。そして任意か強制かということ以前に社員の安全・安心のために大切なことです。(中には給料手取りが減るから嫌だという社員さんもおられます。そうした社員さんにきちんと説明し納得してもらうことも経営者の仕事です。)
過当競争によりダンピングが横行し、請負金額の減少で泣かされているのは重下請構造のなかで労務費割合が多い3次、4次・・・といった下請企業でしょう。何を勘違いしたか「削りやすい」と誤解された人件費ばかりが圧縮対象になっていく流れは食い止めなければなりません。
加入促進と施工側へのアピールも大切ですが、工事金額の下げ止まりのための対策も必要です。公共工事においては最低制限価格と同様に最低労務費価格や割合で入札時点での対策、そして労務費としての支払の裏づけをとる施工・完了時のチェックも必要でしょう。
業界の維持発展のために避けては通れない道です。私も微力ながらこの取り組みを応援していきたいと考えています。

建設業経営セミナー in 富山、金沢

20120711231933 建設会社向けに財務分析を解説するセミナーの講師を富山、金沢で務めます。

今日は1日目、富山での開催でした。

このテーマでのセミナーはこれまでにも何回か行われ、このブログでも何度か紹介しています。

※今回の主催者の案内ページはこちらです。午前:あさかわシステムズ株式会社殿 午後:北陸コンピュータ・サービス株式会社殿

今日はそのセミナーの中でもキャッシュフローについて語った内容を紹介します。

企業経営は高度経済成長期の売上重視経営から利益重視経営、そしてキャッシュフロー重視経営に推移しています。何を重視するかで方法論はかわりますが、企業が存続するために何が必要かという原則はかわりません。それは売上、利益ではなくキャッシュ・現金です。現金がなくならなければ企業はつぶれない。そのために利益が必要であり、利益を得るために売上が必要なわけです。

それでは結局利益だけを見ていればいいのでしょうか。

残念ながらそれだけでは足りません。キャッシュフロー経営においてキャッシュ・現金を増加させる方策は8つあります。

  1. 売上債権を減らす
  2. 商品、仕掛品を減らす
  3. 固定資産を減らす
  4. 減価償却を行う
  5. 仕入債務を増やす
  6. 借入金を増やす
  7. 増資をする
  8. 利益を得る

このように「利益」追求はキャッシュフロー経営においては8つのうち1つしか重視していないことになります。

そして中小企業がキャッシュフロー経営を行うための問題点が1つ。それは損益計算書や貸借対照表と違ってキャッシュフローの情報を得るキャッシュフロー計算書が作成されていないことです。税務申告にも使うことがないので・・・でもキャッシュが経営上一番大切なのに・・・とここに矛盾があります。

それではキャッシュフロー計算書を作成すればいい。その方法は3つです。

  1. 会計ソフトの「キャッシュフロー計算書」ボタンを押す
  2. 税理士に依頼する
  3. 自分で作成する

このセミナーでは簡易法で3の方法を紹介しています。簡易法なので誤差もありますが、管理会計で必要なのは正確さよりスピードです。貸借対照表を2期分並べれば誰でも5分もあれば作成できます。これは自社のものを作成することはもちろん、ゼネコンが協力会社に対して経営指導をする場合などにも有効です。

簡易法で営業CF、投資CF、財務CFを得られたら、営業CF+投資CFで表されるフリーキャッシュフローをどうプラスにもっていくかを前述の8つの方策で考えていきます。

・・・と、これだけでも1日語れそうな内容ですが他のテーマも含めて持ち時間はちょうど100分。表面的な知識の提供しかできないのが残念ですが、それでも1社でも多くの建設会社に財務分析の本質を講義できることは自分の理念に照らし合わせてとても幸福なことです。

明日に金沢開催の方もがんばります。今日本番で気がついた問題点を改善するためにいまからパワーポイントの資料を少し変更します!!

RICEの「建設投資の中長期展望」をみる

Phm01_0976 建設業大好きコンサルタントを自負するものにとって、建設業界の動向といった情報は定期的に入手するようにしている。

そのうちの1つが建設経済研究所が毎月発行しているレポート「MONTHLY 研究所レポート」だ。

今月号のなかで「建設投資の中長期展望」の記事があったので、簡単だが紹介する。

1.政府建設投資全体
 今後も大型災害の発生が予測されるなかで国民の安全、安心を守るための多くの課題を解決する建設投資は、少なくとも経済成長率と同じ水準で推移する。成長戦略シナリオでは、2011~2020年度で平均年2%程度上昇。

2.政府維持修繕工事
 維持修繕工事は今後も急増し、2030年頃には現在の倍程度が見込まれる。また壊れてから直すのではなく、壊れる前に手を加えることでトータルコストを抑える考え方が広まる。
 【安田補足】ちなみに今現在建設投資全体で維持修繕が占める割合は25%程度といわれているので、投資全体が伸びないとしたら倍、すなわち50%。全体の半分は維持修繕工事となる時代になるということ。

3.民間住宅投資
 消費者ニーズにあわせて安価な住宅が提供される流れは投資額全体を押し下げることになるが、震災以後の防災意識や自然エネルギー活用の流れは逆に押し上げる要素となる。2020年の着工戸数は90万戸と予想され、投資額全体でも2009年度比で7.6%増の13.8兆円と予測される。

4.その他
 その他にも民間非住宅は微増、民間土木は横ばいと予測されている。

建設投資は下がり続けると考える人が多い。しかし必要なところにはお金をかける。特に安全安心は建設投資にあたって重要なポイントとなる。公共土木にあたっても防災に関する分野は今後も増加が見込まれる。こうした流れとなる可能性は高いと考えている。

建設会社の経営者の皆さん。こうした情報を取り込みながら、自社の強みを伸ばして、どう進んでいくのか、是非考えてみてください!!

建設業の経営多角化

120626_10_35_02建設業しんこう」6月号を読んだ。特集は「建設業の経営多角化」。

建設会社の新分野進出は国交相・建設業振興基金が長年モデル事業として促進してきた。そのなかで農業、福祉などの分野が有望視され、また本業の建設業においては維持修繕など細やかな対応が必要とされる分野へのシフトが必要とされた。

今回の特集においても農業分野、介護・福祉分野への進出事例と建設業のサービス業化事例、計3つが紹介されている。

こうした事例を表面だけみて「うちの会社でも真似できるかな??」という視点で考えても何も生まれてこない。必要なのは事例企業の経営者が自社の5年、10年後にどういったビジョンを掲げて、どういった方針でこうした新分野進出に至ったのかを検討しなければいけない。

新しい事業を開始するには「3つの『や』」を考える必要がある。1.やりたいか、2.やれるか、3.やるべきか。

表面的な検討は2の「やれるか」だけに留まる。殆どの企業は事例企業と置かれた環境も違うし活用できる経営資源も異なる。それなのに「やれるか」を検討しても「うちとは違う」という結論しか出てこないのだ。

何のための新分野進出なのか。それは企業の存続のためだ。存続のためには持続的な変化が不可欠である。「やれるか」を検討するにしても現状で比較するのではなく、「どうしたらやれるか」まで踏み込むべきだろう。

経営者としてビジョン、方針を掲げて、新分野進出事例を研究し、自社に活かせるところは何か・・・ そうした視点で事例にはあたるべきだろう。

元請受注に向けて販促活動を開始した企業

Phm11_0038 先日、経営相談で和歌山の建設会社を訪問しました。下請工事が中心で粗利率が低迷。数少ない元請工事は粗利率が良いのはわかっていても紹介など偶然機会を期待するスタイルで全く伸びていない。そんな企業へ、「これならうちでもできるかも・・・」という元請受注に向けた営業方法を紹介してきました。

そんな企業が「こんなチラシを考えたのですがどうですか?」と後日相談に来ていただけました。小さくて自信なさげですが、「やる気」が芽生えたことにとても感激しました。やる気のある企業はどんどん支援したくなります!!

そのチラシは周年記念で顧客紹介割引キャンペーンを打つというもの。既存顧客への囲いこみが出来ていなかったので訪問理由としては問題ありません。それでも指摘したいことが山ほどありました。愛のある厳しさですべて指摘。例えば・・・

  • 顧客紹介依頼が訪問文句であるが、訪問先そのものを営業するための作戦が練られていない。紹介は訪問理由でしかなく、訪問先、照会先の両方を同時に営業する仕組みを考えなくてはならない。紹介には訪問先顧客の満足度が高くなくてはなりません。これをきっかけに過去の施工に対しての満足度アンケートも取るなど信頼関係の構築をする必要があります。
  • 「訪問先が顧客を紹介する理由付け」が必要です。キャンペーンでは紹介時の粗品、成約時の商品券進呈などがありますが、「私が商品券をもらえるので、あなたを紹介して良い??」なんて紹介先に聞けるはずがありません。訪問先、紹介先両方が建前と本音でWinWinとなる仕掛けづくりが必要です。

こうした指摘をいくつかさせて頂きました。それでも第一歩を歩みだした支援先に大きなエールを送りたい気分です!!

新聞折込の素敵な住宅チラシ

120522_21_28_46 先日の新聞折込チラシをチェックしていましたら、思わず手にとってしまったチラシ(?)が入っていました。

内容は住宅ですが、デザインや7ページというボリュームから私鉄などで配布されるフリーペーパーのようなイメージで、明らかにターゲットは若ての女性。恐らくは賃貸マンションなどに住んでいる20代~30代の子育て世代のママの方がターゲットでしょう。

120522_21_29_10 紙面もやさしい幹事ででいわゆる「かわいい」と表現されるデザインで統一されています。

広告主のホームページをチェックしましたら、この紙面とのデザイン統一はされていないものの「子育て」というキーワードで共通化され、うまく誘導しているなと感じました。

新聞折込も「AIDMA」理論が有効で、最初のAとなる「何これ?かわいい!!」はとっても大切なスタートです。紙面を見て、ホームページを見て、欲しいと思わせる。うまくマーケティングの本道を表現しています。

久しぶりに「これは!!」と興味を持ったチラシでした!!

※念のためですが、この広告主と安田コンサルティングは何ら関係がありません。支援先の宣伝ではありませんので。。。

建設会社の決算書分析で留意すべきこと

Image001 ある企業の経営支援を行うために決算書の分析を行った。

左のグラフは各数字をプロットしたもの。預かった決算書は建設業会計に対応しておらず材料費以外の労務費、外注費、間接経費はすべて販管費に含まれているタイプであった。

建設会社であっても建設業会計に基づいた決算書を作成していないケースは多い。担当する税理士が建設業会計に詳しくない場合など理由は様々である。

このグラフでまず最初に着目すべきは粗利のところである。決算書の売上総利益を単純に粗利として捉えると、売上(緑)と粗利(赤)は明確な相関があり、売上拡大にともなって粗利も増加していると考えられる。

しかし、建設業は重下請構造である。原価の大部分を外注費が占めるのに、その外注費が販管費に組み込まれていると当然正しい分析はできなくなる。そこで販管費内の「外注工賃」に着目するとグラフ(黄色)でもどんどん外注費が増えていることがわかる。これを差し引いた粗利(外注費込)(ピンク色)を見ると見事に減少傾向にあることがわかる。

売上重視でドンブリ勘定の建設会社に多く見られるパターンである。売上が伸びているのに利益が確保できず借入依存体質となっている。「忙しいのに経営が良くならない」と経営者は嘆いているのだ。経営改善の策として販管費のコストダウンを試みる。この企業においても外注費を除いた販管費(水色)の値は減少している。しかし経営は良くならない。何故なら原因は販管費ではなく工事原価にあるからだ。

工事原価を見直すのに画一的な方法論は存在しない。工事別に予算と実際原価を比較してコストダウンの可能性を検討することになる。その前提として、工事別に原価が把握できることが必要。だから建設業会計を導入する必要があるのである。

※決算書では一般会計にして、管理会計(内部資料)で建設業会計を導入している場合は問題ない。

「うちももしかして・・・」と一度分析してみることを提案する。

電子入札においてJavaの起動が遅いときに、一度お試し下さい

公共工事等の電子入札に参加するにはパソコン、ICカードなどを準備して予め必要な設定をすませておく必要があります。概ね以下の2ステップにわかれます。

  1. ICカードを入手したところから提供されるソフトウェア等のインストール
  2. 各自治体等で個別に指定されたブラウザ等の設定

1の作業の中にJavaセキュリティポリシー設定というものがあります。これは各自治体の電子入札に参加するために個別に設定が必要なのですが、殆どの自治体の設定項目が自動で設定されるような「自動設定」機能も設けられています。

Image_2 この画面のように名称と対応するURLを入れるだけなのですが、すべての自治体ごとに入れるのは大変なため、自動設定が用意されているわけです。

ただ、自動設定で設定される件数は非常に多く、この設定件数の多さが電子入札サイトのJavaの起動の遅さに影響していることがわかりました。

これまで自動設定で済ませていたのですが、電子入札サイトに入ってからJavaが起動するまで5分。遅いときには10分以上かかるときがありました。何か対策をと自治体のコールセンターに問い合わせても解決しません。

そこで最低限の設定だけを行おうと自動設定もやめて入札参加したい県だけを登録しました。そしたらJavaの起動が1分とかからず、驚くような改善がありました。

Javaの起動が遅い理由は色々とあるようですが、是非一度お試し下さい。

国交省より「中古住宅・リフォームトータルプラン」が策定発表されました

Image 国交省より「中古住宅・リフォームトータルプラン」が策定発表されました。

(参照:報道発表資料

住宅市場の将来像として「新築中心の住宅市場から、リフォームにより住宅ストックの品質・性能を高め、中古住宅流通により循環利用されるストック型の住宅市場に転換する」としており、2020年(平成32年)までに中古住宅流通・リフォーム市場の規模を倍増(20兆円)させるとあります。

長期優良住宅が制度化されて、ずっと問題視されてきたのが中古住宅の流通です。100年住宅、200年住宅をうたってもワンオーナーであり続けることが少ないことを考えると物理的に100年経ってもほとんどの間が空き家となっては意味がありません。だから安心して中古住宅を購入できるよう適性な市場を形成する必要があります。

内容としては以下の5項目があげられています。

  1. 中古住宅流通を促す市場の環境整備
  2. リフォーム市場の環境整備
  3. 既存住宅ストックの質の向上の促進
  4. 中古住宅流通・リフォームの担い手の強化
  5. 住環境・街並みの整備

これらの項目に関連して不動産業、リフォーム業向けの支援施策が講じられるでしょう。将来20兆円市場にとあります。建設投資は現在40兆円ほど。おそらく2020年頃はその30%~40%が維持修繕関連になると予想しています。それより大きな中古住宅市場ができるということです。リフォームはもちろん不動産流通分を含めての市場規模ですが、建設業界で今後の明るい話題の1つになることは間違いありません。

長期優良をうたう大手住宅メーカーもすでにリフォーム事業に参入しているところが多いですが、不動産業にしてもリフォーム業にしても地域密着型の企業が活躍できる場であることは間違いありません。また地域の福祉関連事業者と連携すれば中古住宅を介した高齢者の安全・安心の暮らしを提案できそうです。

トータルプランに従いリフォーム業を今後の拡大の柱として検討することは住宅関連事業者だけでなく重要な要素の1つと言えるでしょう。

松阪商工会議所の建設部会にて『経営者が舵取りに必要な10の武器』というテーマで講演して来ました

120326_16_28_08 3月26日は松阪商工会議所の建設部会にて『経営者が舵取りに必要な10の武器』というテーマで講演して来ました。開始時刻は19時。皆さん現場作業など業務終了後で疲れているところですが熱心に聴いて頂きました。お一人、居眠りされている方もおられましたが、今後の皆さんそれぞれの幸せのためと、肩をたたいて目を覚ましていただきました。「寝かせてあげよう」ではなく愛あってのささやかなムチです。また、居眠りをさせてしまった講演者私自身の力の至らなさに反省です。

講演テーマの「10の武器」は最近よく取り上げる話です。イラストで表現しながら経営に必要な様々なポイントを順を追って説明できるので皆さんの理解も進むようです。

さらに今回は「10個の武器」を手に入れたら是非やってほしいことということで「インスタント提案」の手法を説明させて頂きました。提案営業というと話が重たそうですが、実は提案営業という場面は毎日必ず現場で発生しています。施主や元請と現場担当者がコミュニケーションをする場です。施主や元請の「困りごと」をうまく引き出し、解決策を提案する。これが提案営業です。必ずしも提案書は必要ありません。そしてその主役になるのは営業マンではなく現場担当者です。現場担当者が質問力などのヒアリング能力を高めることがまず必要になります。

質問力がメインではなかったため、幾つかの簡単な事例を紹介しただけだったのですが、先ほどフェイスブックで受講者の方からメッセージをいただきました。

「松阪での有意義なセミナーありがとうございました。ぜひ今度はヒヤリング能力について機会があったらきいてみたいとおもいました。ありがとうございました。」

ありがたいお話です。今度ヒアリング能力についてのセミナーも企画しようと思案中です。