制約理論の続き

 昨日、制約理論の書物について紹介した。建設業界においても様々な制約があり、その制約を改善していくことで経営の効率化を図ることができる。ただし「制約」を見誤ると効率化につながらない場合もあるので注意が必要だ。例えば以下の業務フローを考える。
営業部門 担当A 新築1件 リフォーム3件
施工部門 担当B 新築1件 リフォーム2件
※それぞれ月当たり
 経営者は売上高が足りないので営業部の担当Aにさらなる営業強化を指示する。しかし、施工部門の月当たり施工量がボトルネックとなりこれ以上受注を増やしても施工が間に合わず全体の売上高(利益)は変化しない。企業のアウトプット(制約理論ではスループットという)は制約部分で決まるとはこういうことである。
 簡単な例であるが、強化すべきは営業部門ではなく、まず施工部門なのである。段取りの工夫や効率化、あるいは増員によって施工部門の能力を上げることができればスループットを改善することができる。
 安田コンサルティングのボトルネックは業務フローが単純なので間違いなく私自身である。
 御社の制約(ボトルネック)は何だろうか?

600円で制約理論

 ちょっと隙間時間ができて手持ち無沙汰になってしまい書店に立ち寄った。そこで見つけたのが『エリヤフ・ゴールドラットの「制約理論」がわかる本 ポケット図解』だ。以前セミナーで制約理論に触れ、もう少し知識の整理をしたいと思っていたところだった。そして何より安い!税込630円なのだ。大阪人で安いものに目がない私は思わず買ってしまった。「ポケット図解」シリーズということもあり、各項目には必ず図解が示されている。(不要だと思われる箇所も無理やり図解されているので一部わずらわしいところもある・・・)
 知識の整理だけではなく最後には生産工場を想定した演習問題までついており、ページ数も100ページ強(半分は図解なので実質50ページ程度)であるためちょっとした移動時間にでも制約理論についての知識の整理ができるのでお勧めである。

自立する地域と支える建設業

 8月4日に国土交通省から重点施策が発表された。施策は以下の通りである。

  国際競争力の強化・観光立国
  地域の自立と競争力強化
  安全・安心基盤の確立
  柔軟で豊かな生活環境の創造
  「新・成熟社会」形成に向けた政策プラットフォーム

 これらの中で2つ目のキーワードとなっている「地域の自立と競争力強化」。自立と競争力という言葉で私が思い浮かべるのは中小企業庁が行う中小企業支援である。数年前までは包括的な支援が中心であったのだが、自助努力を行う中小企業を支援する方向にシフトした。これは時代の潮流であると考える。
 そして今回の国交省の重点施策にも自立・競争力強化の言葉が見られ、さらにその内訳を見れば「頑張る地域への支援」が中心になっていることがうかがえる。活性化に対して何らかの動き・対策を講じようとする地域に支援の手を差し伸べようとする姿勢は前述の中小企業支援の考え方と似ている。この支援の中には地域で活躍する建設会社に対するものもある。地域貢献活動を経営事項審査の加点対象とする(5月より開始済み)施策や経営基盤を強化するためのものなどである。
 経営基盤の強化もあくまで自助努力をするものに限られる。新分野進出の促進や経営相談事業など、強化のための施策が目立ってきているのもこういった背景によるものだ。

住宅ローンに関する知識提供

住宅金融公庫の融資金利が改定された。基準金利が3.71%から3.75%に引き上げられる。改定後の公庫金利は平成18年8月3日(木)からの申込みに適用される。
最近、金融機関を中心に住宅ローン勉強会セミナーが盛んである。また、金利引き上げにともない借り換え需要も増加している。
住宅を提供する側の工務店についても顧客に対する金融機関の融資条件は常時チェックしておきたい。ファイナンシャルプランニングまでは必要ないが、近隣金融機関の住宅ローンについての情報を収集し顧客に提供することもサービスの1つである。

企業間の電子契約

 建設業やソフトウェア業、重下請構造である業界において発注契約業務は繁雑な業務の1つである。これらの業務を電子的に済ませることができれば節約・効率化できる部分は多い。例えば、印紙代、通信費(郵送費)、そして作業に携わる担当者の労務費などが挙げられる。
 自治体などとの契約には電子契約が進みつつあり、上記のような恩恵もまだまだ少ないながらも得ることができる。では企業間ではどうだろうか?大手企業が中心になって電子契約ができる仕組みを展開しているケースを見かけるが、事例が増え、インフラが整備され、運用コストも下がってきたため中堅規模の企業まで導入の可能性が出てきている。
 もちろん発注元が主導で整える必要があるのだが、ASPサービスも考えられる。ASPであれば自社でハードウェアなどを導入維持する必要はない。
 例えばプラットフォームでは株式会社帝国データバンクの電子認証サービス、ASPでは株式会社イーシードットコムのサービスがある。「まだまだ先の話・・・」ではない。誰でも考えうる経費削減策は出尽くした感がある中、企業間の電子契約による経費削減は今後広がっていくに違いない。

業務に追われ惰性で進む

 目の前の業務が山積みで、それらをこなすだけで食べていける・・・
 このような状態のとき本当にこなすだけでそれ以外に何もしなければ、その状態が終わったときに慌てふためくことになる。それは長期的に見れば公共工事が多く行われていた時代の建設会社が今おかれている状況と似ている。逆に経営相談に訪れる経営者には、このような企業の場合と先手を打って業務が山積みの企業の場合がある。前者の場合はその場をしのぐための緊急な対策が必要で、その対策は付け焼刃であることが多い。後者は長期的な目標に向けて効果的な対策を講じることができる。
 両者の違いは中長期目標の有無と目標に向かった経営を行っているかにある。
 実は私も今業務に追われ惰性で進みつつある。自分への戒めのためここに書いているのであるが、自分を振り返ると反省すべき点が多い。
 1.中長期目標はあるが、その目標に応じた動きができているか評価できていない
 2.継続的な仕入れ作業を行っていない(ここでいう仕入れは知識などのこと)
 3.向こう一週間の予定が空で言えない⇒優先順位がつけられていない
 お盆期間の間に、これらのことを見直したいと思っている。

管理手法と情報システムを同時に変える

 業務プロセスの変更を伴わないIT化の成功なんてありえない・・・
 コンサルタント、ITベンダー側の立場からいえば変えたいところなのだ。
 しかし、システムの老朽化などによる必然からくるシステムの一新の場合、同機能のリプレースでもしない限り、業務プロセスとシステムが同時に変わる。互いに関連して変わるのであるから業務プロセスを主軸に各部門担当に周知し問題点の抽出・解決策の提示を行えば良い。
 しかし古い・悪いと双方分かっている業務プロセスでも最終的に残すことがある。概ね管理プロセスの場合が多い。そして、現場レベルの業務プロセスだけが変わるので不整合が生じる。そこで不整合をカバーするためにカスタマイズを行い費用をかける。
 これは大きくみればシステム化の失敗パターンであるように感じる。不本意な形でシステムが稼動するからである。しかし管理手法は経営者の方針にかかわる部分が多く、こちらの考えをぶつけてみてもどうにもならないケースがある。そしてこちらが不本意だと思っていても使う側には不本意でないこともある。
 自分の考えを押し付けることはできない。少し思い悩んでいる・・・

建設業、無料の経営相談

 ここ最近電話やメールで頂く相談案件について『ワンストップサービスセンター事業』の利用を勧めている。1回3時間までで最大2回無料で利用することができる。制度の宣伝不足かほぼ全員が事業の存在すら知らないことが多い。国土交通省が行う制度なので、商工会議所や中小企業支援センターにいっても情報が得られないことも原因の1つだ。
 この制度は指名もできる(申請書に指名したい専門家名を付記すればよい)ので相談者から指名を頂くこともある。(制度の利用を勧めて指名だけ頂けないケースもある・・・)
 建設業における専門家が登録されているので是非とも利用してみてほしい。

尺貫法とメータモジュール

 日本の建築では寸法をとる際に尺貫法(1尺=30.3cm)を使う。柱と柱の間は3尺(90.9cm)であることが多い。
 尺貫法を使っていること自体は何の問題も無いが、一部の建売住宅のチラシに思わしくない表記がある。図面に3尺と書かれてもわからないのでメータモジュールで表記するのであるが、3尺を「1m」と表記している場合がある。実際の寸法と異なるのである。長さを実際より長く表記していれば床面積なども実際より広い計算となる。面積が広ければ同じ金額をかけた住宅でも坪単価は安く表記できるということである。
 一部の工務店は「よそでもやっていることだから・・・同じ土俵で戦うために」と上述のようなことをやっている。もちろんやっていない工務店もある。
 買う立場からすれば迷惑極まりない風習である・・・
 誤った風習とは真っ向から立ち向かって欲しいものである。そしてそういった風習があることを顧客に伝えることは提供する側の義務だと思う。

福祉用具の中古販売

 日経産業新聞(2006.8.2)より
 介護保険法改正により要支援と要介護一の軽度の介護者は福祉用具のレンタル料が一割の自己負担から全額自己負担となった。全額自己負担であれば将来的に買ったほうが安くなると試算できるケースも多くなる。まして中古で調達できれば尚のことである。今後福祉用具の中古市場は大きくなることが予想される。
 工務店においても福祉リフォームの際に必要な福祉用具の調達を自ら行い設置も行うサービスが考えられる。もしくは福祉用具と同等の機能を住宅改修によって実現する場合も今後増える可能性がある。